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スズキとダイハツ 経営面から見る2016年終盤戦

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日本自動車工業会の西川会長が9月の定例会見で「業界全体に大きな不信感を招き、とんでもないことだ」と遺憾の意を示したように、自動車業界を震撼させた三菱自動車とスズキによる燃費データの不正問題。

少し気が早いようだが、今年の重大ニュースでは「豊洲新市場」問題と共に上位に食い込むことは間違いないだろう。

ただし、燃費データの不正でも監督官庁の国土交通省から「常軌を逸する事態」と厳しく指弾されたのは三菱自動車の方だった。

不正発覚後に社内で実施した再測定でも、燃費が申請値(カタログ燃費値)を下回っていた車種については、試験結果の中から有利な数字を選び出す「いいとこどり」をして、カタログの燃費に近づけようとした意図が疑われたからだ。

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スズキはセーフだった?

一方、スズキは「法令違反に対する重大さの認識がなかった」と鈴木修会長が謝罪したように、法令に定められた屋外で自動車を走らせて走行抵抗を測定する「惰行法」と異なる方法を採用していた。風洞試験室で測定した空気抵抗などを測り、それを積み上げることで走行抵抗値を求めていたのである。

もっとも、不正発覚後、実際にスズキが惰行法で再検証した結果、調査した車種全てが申請値を上回り、国土交通省も独自の調査では「全車種がカタログに記載されている燃費性能を上回った」と公表した。

つまり、国土交通省は法令違反でも燃費データの申請値と大きな狂いがなければ「セーフ」と判定をしたわけで、再測定でも不正が疑われた三菱自動車とは雲泥の差である。

スズキは「燃費」問題では命拾いをしたようだが、軽自動車の販売については法令違反の発覚前まで拮抗していたライバル・ダイハツ工業との差は、6月と7月は6000台もの大差がつくほど、スズキの不振が際立った。

ただ、「人の噂も75日」とはよく言ったもので8月はダイハツとの差が3000台近くまで縮まった他、小型車戦略の教化で「ソリオ」なども好調で燃費不正の影響も徐々に解消されつつある。

ただ、気がかりなのは少し前まで絶好調だった軽自動車市場が、縮小に転じていることだ。

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軽自動車市場の縮小は大丈夫?

昨年4月の軽自動車増税が買い替え意欲を失ったことも大きいが、秋葉原などの量販店で安売りが横行している白物家電の二の舞になることを危惧して鈴木会長が「お行儀が悪い売り方をやめる」と宣言したことも微妙に影響しているようだ。

スズキとダイハツの熾烈なシェア争いの中で、各社がディーラーへの押し込み販売を増やした結果、大量の新古車が発生した後遺症も指摘されており、鈴木会長の英断が乱売競争に一定の歯止めをかけたことにもなる。

そんな中、トヨタ自動車がダイハツを完全子会社化した。豊田社長が「ダイハツブランドは残す」と約束すれば、三井社長は「BMWグループのMINIのような存在になりたい」と意気込む。

しかし、非上場会社となり、4半期ごとの決算開示の義務もなければ、完全子会社後の新車発表会では三井社長の姿もなく、経営方針はベールに覆われたまま。

スズキにとっても、トヨタの完全支配下で経営環境も違いすぎるダイハツと互角に戦えるとは到底思えない。百戦錬磨の鈴木会長も無茶をせずに「負けるが勝ち」というしたたかな作戦に切り替えたとも受け取れる。

燃費の法令違反は想定外でも「軽の安売り自粛」や「小型車戦略強化」は、将来の再編を見据えたトヨタ詣での手土産とも考えられるからだ。

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